大口水産株式会社の創業者・荒井知行は、明治41年11月、医王山のふもと金沢市湯谷原町（当時河北郡浅川村湯谷原）の農家に生まれました。5人兄弟の次男だった荒井は、14歳で金沢の魚屋に奉公に出ます。その後大阪での修業を経て昭和15年に独立、近江町市場の塩干物問屋の一角を借りて自らの商店を構えました。
当時は戦争の影響で統制経済の色合いが濃く、鮮魚の配給ルートは一般大衆魚、業務用、大口用に分かれていました。荒井は昭和19年6月に設立された金沢水産物大口配給有限会社の常務取締役に就任し、戦時下の水産物配給に奔走しました。この会社が現在の大口水産のルーツとなります。
戦後、物資不足によりものの値段が高騰していました。そんな中で創業者・荒井は正札販売による「皿盛り」を開始。売り手が値段を付けるたたき売りではなく、お客さんの立場に立った商法を取り入れたのです。
また、高級魚には目を向けず、サバ、イワシ、イカ、カレイなどの大衆魚を目一杯仕入れ、お客様が買える値段まで落とすという損得抜きの商売で、大衆に安く魚を提供し続けました。
「商売は自然の恵みがあり、物流があり、従業員がいて、お客様がいて、そのすべての恵みがあって成り立つもの。それが商売の原点である。」
商魂の人・荒井の理念と共に大口水産は歩みを続けていくことになります。
昭和30年以後、車社会への変化に合わせ、近江町市場全体で駐車場の建設が急務となり、荒井は近江町の駐車場建設のため奔走しました。
また、業務用家電の進化も目覚ましく、大型冷蔵庫を導入し、鮮魚を新鮮なままご提供することが可能になりました。
昭和41年の中央卸売市場の設置と前後して、企業としての新しい体制づくりも始まります。昭和58年には中央市場の場外に中央集配センターを設置。ここを拠点として、コンピュータを導入した受発注システムと合理的な輸送システムを駆使し、金沢とその近郊、さらに県外へと顧客を開拓していきました。
平成・令和と時代が流れる中で、世の中の技術は大きく進化しました。
配送ルートの効率化、冷却方法も高度になり、日本全国・海外にも新鮮な状態で鮮魚を運ぶことができるようになりました。
また、情報伝達技術の発展により、素早く情報交換することが可能となり、美味しい魚を安く大量に仕入れ、お客様にご提供することができています。
時代の変化・技術の進化とともに変わるべきところは変わっていくことは大切なことです。そんな中でも「お客様第一で美味しい鮮魚を安く大量にご提供する」という大口水産の商魂の心は変わりません。
私たちはこれからも、お客様に親しまれ必要とされる企業であり続けるべく、邁進してまいります。
日よけや雪対策として近江町市場にアーケード建設の話がこの頃持ち上がりました。アーケードの設置許可はなかなか下りませんでしたが、荒井知行はアーケード補強建設委員会とともにアーケード設置に尽力。結果的には現在の近江町の象徴とも言えるアーケード街が徐々に構築されていったのです。
「市場で働く人に安くておなか一杯になってもらいたい」という思いから始まったうどん屋「百万石うどん」を運営していた大口水産麺類部が大口商事株式会社となって独立しました。
飲食店の経営、麺類の製造販売等を行っています。
卸売・加工部門を分社化したのが、BSO株式会社です。
ウロコ取り機、三枚卸し機、刺身スライサーなど全自動で魚介加工を行う設備を取り揃え、取引先の企業が使用しやすい状態に加工して配送を行っています。
さらに最新鋭の製氷機「ハイブリッドアイス」を備え、すぐ調理できる状態から、長時間保管が可能な冷凍状態まで、お客様のニーズに合わせた保存状態でお届けできます。
近年はショッピングセンターにも出店を始めています。大口水産の強みはやはり鮮魚。質の良い鮮魚をお客様が買いやすい値段でご提供することを心掛けています。
また、時代の流れとともにパックや丸魚のご提供、カップ寿司の開発など、お客様に求められる商品づくりにも力を入れています。これからも地域の人に親しまれる魚屋として邁進してまいります。
